第5回: 成長の東

  第5回: 成長の東
  • 風水
  • インナーデザイン
  • ストレスケア
  • 心と部屋の整理
  • インドアライフ
  • 愛のある部屋
住空間が持つ気分

第5回: 成長の東

住空間が持つ気分

里美の気持ちは幸せに満ちていた。これからの始まりに胸は高鳴り、目に映るものすべてが輝かしい、そんな心地だ。かつて憧れだった先輩に再会し、良い関係を築きつつあった。里美は公私ともにこれからの生活に希望を抱いていた。一日の仕事を終え、帰宅し、これからの将来に思いを馳せた。

「仕事も頑張りたいし、いずれは結婚もしたいな」

頭の中で、自分の行く末を示す地図を描きながら、バタッとベッドに倒れこむ。里美の寝室は、部屋の東側にある。風水では、東の方位は五行でいう木の方位に該当する。木の方位は、発展運と関係し、良い未来を導くために重要である。また木の方位は、音の流れから運気が生じるらしい。里美は寝室にあるオーディオプレイヤーの再生ボタンを押し、音の流れの中に身を委ねた。

「寝室って落ち着く。なんか体に音や空気が染み渡る感じ。」

成長の東01寝室は、一日の終わりと始まりの場所であり、運気もまたそこで蓄えられる。身体や運気が再生する空間なのだ。当然、その場所をどう作るかによって、蓄えられる運気もまた変わってくる。里美の寝室は部屋の東側にあり、東の壁には窓がある。朝、東から登ってきた太陽の光が、窓から部屋に入り込み、一日の始まりを優しく照らしてくれる。そういった場所の性質にあわせて、里美は寝室にあるベッドを東西方向に置き、東枕で寝るようにしている。枕の向きは、その方位からの運気を吸収する上で非常に大切だ。東に頭を向けて寝ると、東の木の方位が司る発展運がもたらされる。寝室は、未来へ続く時間の流れの中にあるのだ。里美はベッドの上で、ぐっと体を伸ばし、窓の向こうの景色を眺めた。

「西日に染まった空が綺麗」

成長の東02寝室からは、淡い赤色に焼けた空が、東の窓にかかったカーテンを通してぼんやりと見えた。寝室の窓にかかるカーテンは、部屋の旺気を循環させるために意識する必要がある。カーテンがかかっていない状態や不十分であると、気が発散してしまうからだ。つまり、気を室内にとどめるためには、カーテンを二重にしておくのがよい。里美の部屋では、淡いライトグリーンのカーテンを室内側に、さらに窓側にレースのカーテンをかけている。木の方位は、ライトグリーンやペールブルーなどの色が適している。里美の部屋は、白と相性がいい南の方位を座山としているため、全体の調和を考え、寝室も淡めの色を基調に整える。寝室のシーツや布団カバーも、淡いライトグリーンに統一し、派手にならず柔らかい空間が広がっている。

「朝の光を浴びたお花の表情が好きなんだよね」

ベッドの脇にはお花が置かれている。お花は空間に生気をくれるため、部屋のいずれの場所においても、そこを活気づけてくれる。運気を蓄える場所である寝室ではなおさらだ。花の香りが広がる空間の中での眠りは、美しさや愛情の運気をくれる。ベッドに横たわり、ぼーっとお花を見つながら、そっと目を閉じた。

「朝か…いつのまにか寝ちゃってた」

成長の東03東からの爽やかな光を浴びつつ、里美は寝室を出てリビングに向かった。居間の南側にあるソファに腰をおろし、眠気が覚めるのを待つ。里美の部屋は、南を座山としているから、このソファのあたりが部屋の中心といえる場所だ。全体の運気を司る場所が落ち着く雰囲気を持っていることは、住人の幸せにとって重要なことかもしれない。里美は、部屋の座山である南の方位を基軸にしながら、西にある本棚、北の洗面所、東の寝室を少しずつ整えてきた。全体の統一感が部屋の運気を上げるために大切だからだ。部屋全体の統一感を保ちながら、それぞれの方位の特徴を持った空間は、どこの場所にいても活気があって、生活が豊になる。それはとても楽しい暮らしだ。

「よし行くかっ!」

朝の光を浴びながら準備の支度を終え、里美は快活に玄関の扉を開けた。部屋の住空間に後押しされるように、今日一日の、あるいはこれからの未来の煌めきが里美の前に広がっていた。