第4回: 黄と緑の部屋、支えあう二人

  第4回: 黄と緑の部屋、支えあう二人
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心と彩り -家族の絆を深める物語

第4回: 黄と緑の部屋、支えあう二人

心と彩り -家族の絆を深める物語

黄と緑の部屋、支えあう二人01家族の居住空間は、異なる性格の人々によって使用されるため、いろんな特徴を抱え込む。美里と優二は、夫婦生活をはじめて16年になるが、美里は明るく外交的であるのに対し、優二はどちらかというと静かで内向的であった。正反対の性格だからこそ、互いの欠点や良さを補えあえているのかもしれない。それは、二人の息子と娘の性格にも引き継がれていて、息子の聡は父親似で穏やかであり、娘の凛は母親似で何事にも積極的である。こうした違いを持った家族の空間は、その個性が時に混ざり合い、時に衝突する。それが、個室空間なら尚更だ。思春期を迎えていた聡と凛には、一人に一つの個室を設けていたが、一般的な家庭と同じく美里と優二は同じ寝室を個室として使用していた。当然、その部屋づくりの際にも、お互いの趣向をいかに取り入れるかが問題となる。

「カーテンの色変えようと思うんだけど、どう思う?」

「うーん、黄色っぽいものがいいけど。」

優二は緑色のものを好んでいたが、美里は黄色が好きだった。緑は「安心感」や「おだやかさ」をイメージさせ、緑を好む人は平和主義者で調和を重視する人だと言われている。しかし、その反面、ひかえめである特徴も持つ。

一方、黄色は「希望」や「快活さ」のイメージを持つ。新しいことに積極的に挑戦し、向上心を持つ人が好む色だ。緑と黄の相性は悪くないものの、どちらか一方に決めようとすると、二人の間で違和感が生じる。

「僕はもうちょっと柔らかい色の方がいいんだけどなぁ。」

「そう?明るい色の方がハッピーでいいじゃない。」

優二は穏やかな性格であったが、インテリアに関心があることもあって、部屋作りに関することはこだわりがあるようだ。しかし、美里は自分の主張を曲げない。

「やっぱり明るい方がいいよ!」

「そうかなぁ…。」

このような色選びに対する趣向の違いは、部屋づくりに関するいろんな場面で起きる。色が統一感は全体の雰囲気の一体感を作るために、すごく重要ではあるが、住む人達の差異が反映されないとすごく息苦しくなってしまう。全体の統一感と多様性のバランスが空間を作る上では大切なのだ。

「ベッドのシーツとか、ラグもそろそろ変えたいよね。」

部屋の中には、ベッド、収納棚、ラグ、テーブル、化粧台、カーテン、照明など、全体の色のイメージに関わる様々な家具がある。部屋全体の色のトーンを作るためには、そこにどう複数の色を配分していくかが重要だ。部屋の基調決めるために、カーテンやベッドのシーツ、ラグなど、部屋全体の中で表面積が大きいものの配色を統一する必要がある。

「優二は緑色がいいの?」

「そうだね、でも黄色っぽいものでもいいよ。」

「じゃあ、淡めの黄緑にしようか。」

黄と緑の部屋、支えあう二人02黄緑は、緑のおだやかさに、黄の明るさが加わったイメージを持っている。優二の性格と、美里の性格が混ぜ合わさったような色である。二人は黄緑を基調色として、カーテン、ベッドのシーツ、ラグを整えていく。また、枕カバーなど小さいパーツにはそれぞれの好きな色である黄や緑を配して、全体の濃淡ができるようにする。また、全体的に淡めの色を用い、それぞれの色が喧嘩しないように考慮した。朝の光があたるとふわっと柔らかい空気が満ちるようだ。

「うん、明るくいいね。」

「そうだね、落ち着くし。」

優二は美里の明るさを、美里は優二のおだやかさを、それぞれに認め合いながら、新しい部屋の雰囲気に心地よさを感じていた。性格が空間に表れ、またその空間が性格に影響を与える。その空間を通して、家族の性格も少しずつ影響しあうのかもしれない。