私たちはさまざまな色に囲まれて生活しています。その色は、個別に、または別の色との組み合わせによって、人の気持ちを動かします。色には誰もが共通するイメージがあります。例えば、赤は活動的、ピンクは華やか、茶色やベージュは落ち着きなどです。カーテンをピンクからベージュに変えると、部屋が落ち着いた感じになるでしょう。
このように色には心理的な効果がありますが、この心理的効果が健常者と認知症高齢者で違うことをご存じでしょうか。ある調査によりますと、相対的には明るい色を好むのですが、白色は別で、単純な白色は目の置き場所が不安定になり、落ち着きがなくなります。白い壁にあたる太陽やランプ照明の光のちらつきが目に入るとイライラを感じさせることがあり、特に光沢の強い色の壁紙やペイントが塗られている壁の場合も、イライラを感じさせることがわかりました。天井の色が白だと、この傾向がいっそう強まります。壁が白色で床が明るい色の場合と、落ち着いた色の場合を比較すると、前者の方が体のバランスが不安定になります。また、シンプルな2色の中間色を交差させた場合、しばらくそれを眺めているとバランスを保てなることもあります。
このように、健常者ではあまり気にならないことなのですが、精神的な不安を与えることがあるようです。では、どのようにすれば認知症高齢者に良い影響を与えるのでしょうか。
- 原色に近い色や赤色の使用を極力避け、緑色で少し柔らかい色を使用します。暖かい中間色は心の落ち着きを与えます。白色でも光沢のあるものより、中間色の乳白色を使用すると心が落ち着きます。
- 直接照明よりも間接照明を利用します。直接照明は、壁の色が強く光沢がある場合、反射するちらつきで不安感を抱いたり、落ち着きをなくすことがあります。
- 廊下等の壁の色は、手摺の位置より少し上の部分を境とし、手摺より下の部分は上の部分よりも濃い色にするか、上の部分と異なった色を使用するとよいでしょう。こうすることによって、歩くときに目の位置を定めやすいのです。
- 床材は暗い色やいろいろな色彩を混合しないようにしてください。このような床材はどこに足を置いていいのかわからなくなり、また黒色の幅が広いと、穴が開いているようにみえることがあります。
これは施設での調査結果であり、全てが住環境に応用できないかもしれませんが、こういったことを出来る範囲で取り入れると、症状が緩和するかもしれません。
冒頭でも少しお話しましたが、色にはそれぞれ人の気持ちを動かす効果があります。好きな色に囲まれると癒されます。色にはプラス効果とマイナス効果があるので、状況によって使い分けなければいけませんが、この効果を住環境に取り入れると、介護する側も受ける側も、より快適に過ごせるようになるのではないでしょうか。
色 | プラス効果 | マイナス効果 |
---|---|---|
赤 | 積極的 | 刺激が強すぎる |
オレンジ | 活動的 | 集中力の低下 |
黄 | 楽しく活発 | 落ち着きがなくなる |
緑 | 安定 | 保守的 |
青 | リラックス | 冷たい |
ピンク | 幸福感 | 幼い |
参考:http://www.fukushi-sweden.net/index.html