第1話: 日本における籐家具の“先駆者”老舗メーカー『カザマ』が語る籐家具の真実

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カヴァースメディア部

「籐(とう)家具」と聞いて、あなたはどんなイメージを抱くだろうか。自然素材が好まれている現代において、籐=ラタンを使った家具は注目を集めているが、一方で、「すぐに傷がつく」「壊れやすい」といったイメージを持たれている人も多いのではないだろうか。

しかし、これは大きな誤解。残念なことに、籐家具を生産・販売しているメーカーや販売店がこれだけ増えていても、籐を本当の意味で理解しているところはほとんどない。籐の真の意味を理解していない素人同然のメーカーが作った商品が大量生産され、それらが籐家具の代表のように扱われ、販売されているのが現状なのだ。 

そのように、国内における籐家具の真の価値が低迷している中、籐と本気で向き合ってきた籐家具メーカーを取り上げて紹介したいと思う。創業100年を迎えた老舗籐家具メーカーの『カザマ』だ。インドネシアを生産拠点にカザマが作り上げる籐家具の完成度は、大量生産される籐家具とはとても比べられるものではない。なぜここまで美しい籐家具を作ることができるのか、なぜここまで品質が高い籐家具を作ることができるのか、籐家具に触れる全ての人たちにカザマの籐家具作りの真髄を知ってもらいたいと思う。

“籐一筋100年” 老舗の籐家具メーカー

カザマの創業は1921年(大正10年)。籐家具の専門メーカーとして横浜の元町に誕生し、創業100周年を迎えた老舗メーカーだ。映画を見ていると、昔のヨーロッパで籐家具が使われている光景を見たことがないだろうか。当時、ヨーロッパでは高級家具として貴族に愛されていた籐家具だが、日本ではほとんど知られていなかった。それもそのはず、籐は熱帯地方でのみ生息しているため、日本の冬を越すことができず、日本で栽培することができないのだ。そのため、日本人にとって馴染みのない素材なのだ。

ではなぜ、カザマは籐家具を生産しようと思ったのだろうか。そこには横浜という土地が大きく関わっている。港に停泊している外国客船の甲板に置かれていた籐家具をたまたま目にしたのがきっかけで、ヨーロッパでは広く使われていた籐家具の存在を知ったのだ。まずは籐という素材を知ることからはじまったカザマの籐家具作りだが、カザマは日本の住まいに初めて籐家具を提案し、日本の籐家具の歴史を作り上げた“先駆者”となったのだ。

誤解されている籐家具の真実

冒頭でも触れたが、籐家具は「すぐ傷がつく」「壊れやすい」というイメージを持たれることも少なくない。だが、これは本来の籐家具の姿ではない。

「安く籐家具を作ろうとした結果、籐家具の本来の魅力が消えてしまったのです」

籐は自然素材ゆえに品質もまちまちで、下処理から仕上げまで、丁寧に手をかけなければ美しく頑丈な籐家具を作ることはできない。そんな中、現代の日本人に好まれているのは、「安く買えるおしゃれな家具」。しかし家具に種類によっては、価格や見た目のみでは本来の魅力が理解できないこともある。籐のような自然素材を使った家具はその類の家具であるにも関わらず、できるだけ安く買いたいというニーズが高まってしまった。その結果、安く購入できる籐家具を作ろうと、低品質の籐が使われ、作業工程は最低限となり、「すぐ傷がつく」「壊れやすい」籐家具が世に多く出回ってしまったのだ。つまり籐家具の価値を下げてしまっているのは、私たち自身に他ならない。

『カザマ』の籐家具作り 3つの柱

カザマの籐家具は、大量生産されるようなそれとは別格だ。それでは、その美しい籐家具作りを支えているのは何なのだろうか。

籐家具の価値は、籐自体の品質にかかっているところが非常に大きいのだ。どれだけ職人の腕が良くても、そもそも籐の質が悪ければ決して満足できる籐家具は生み出すことはできないのだ。出来の良し悪しが、これだけ材料の質にかかっている家具は、籐家具以外にはそうそうないかもしれない。だからこそ、カザマでは籐の品質にも決して妥協はしない。常に目利きの現地社員が籐の品質を見極め、最高品質のものを仕入れる。籐を知り尽くしたカザマだからこそできることだ。

また、カザマではオリジナルデザインの籐家具しか生産しない。籐の性質を深く理解したデザイナーが生み出す籐家具は、修理するときのことまで考えて緻密に計算されているというから驚きだ。壊れたときでさえ美しいと言われ、それはまるで1つの芸術品のよう。カザマにしか生み出せないデザインは、カザマが籐のプロフェッショナルであるという証なのだ。

そして、なんと言っても、すべて手作業で行う籐家具作りがカザマの真髄と言えるだろう。籐を加工しやすくするための下処理から、最終的な仕上げまで、すべての工程が人の手によって行われている。生産拠点が海外だと聞くと、機械を使った生産ラインを思い浮かべるかもしれないが、籐家具は機械で生産することができない。自然素材ゆえに、籐は1本1本太さや状態が異なり、美しい籐家具に仕上げるためには完全に機械化することができないからだ。現地の職人が1つ1つ丁寧に作り上げていく様は、思わず見惚れずにはいられない。

ホームセンターやオンラインショップを探せば、安く購入できる籐家具をいくらでも見つけることができる。だが、品質をないがしろにした籐家具を手に入れたところで、生活や心を豊かにすることなど決してできるものではない。品質にこだわり、職人の手によって丁寧に作り上げられるカザマの籐家具だからこそ、ほっとするあたたかみを私たちに与えてくれるのだ。日本における家具の価値や素材の価値が問われているいまでこそ、籐のプロフェッショナルが作った逸品を傍に置きたいと強く思う。

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