人生の祝福 終章: 贈り物

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カヴァース小説部

終章:  贈り物

 あさ姉ちゃんとわたしでお金を出し合い、両親にシーリーのベッドをプレゼントした。

 

 変わりものの娘なので、お父さんにもお母さんにも、心配のかけ通しだ。今も、早く結婚しなさいとか、孫の顔をとか、ことあるごとに言ってくる。

 「まあ、このベッドで休んで」

 そんな思いで、プレゼントを贈った。

 一生懸命働いて、わたしたち姉妹を育ててくれた両親。

 未だに現役で仕事を続けているし、きっと疲れることも多いだろう。シーリーのベッドなら、素晴らしい時間を過ごすことができる。じっくり癒されて、また次の日に頑張ることができるだろう。

 

 良い寝室は、人生を豊かにしてくれる。実際、わたしはシーリーのベッドに感謝している。

 仕事をしてくたびれても、辛いことがあっても、うちにあのベッドがあって、今日もあそこで至福の時間を過ごすのだと思えば、口角が上がるのだった。

 職場でも、「久住さん、なんか最近良いことあった」と聞かれることがある。表情が優しくなったね、という人もいる。

 そうかもしれない。自分でも思うけれど、同僚や、利用者さんに対しても、ずいぶん穏やかな気持ちで接することができるようになった。

 これが、あのベッドの力なのだ。

 

 「自分が幸せになれる時間を持つのって、大事」

 あさ姉ちゃんは、よく言う。

 「自分が豊かになれる時間って、本当に必要なの。ぎすぎすと自分を追い詰めてばかりじゃあ、誰も幸せになれないわ」

 今、両親は、あのシーリーのベッドで毎晩眠っている。

 わたしが味わったのと同じ至福を享受しているはずだ。

 

 お母さんから、「あれすごくいいね。長生きできそう」というメールが入った。最も、その次に「だから早く孫を」という一文が入っていたのだけど。

 


 自分が豊かで、幸せでいられる。

 そうしたら、自分の周りの人にも、その幸せは移ってゆく。

 不思議なことだけど、それは真実だ。人に伝染するのは悪いものばかりではない。ハッピー感も伝わる。

 実は最近、荒木さんと喋るようになった。

 話してみたら、なかなか面白い人である。

 もう少し仲良くなれたら、家に遊びにきてもらおうかなと思う。

 そうしたら、あのシーリーのベッドに触ってもらうチャンスも、あるかもしれない。

 

 (幸せに、なって欲しいから)

 今日も、腰をコルセットで固め、万全の装備で仕事に臨む。

 おはようございます。お疲れ様でーす。

 元気に笑えば、自然に笑顔が返ってくるように、幸せであるならば、幸せが返ってくるに違いない。

 至福の天使の祝福を、みんなに。

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