第2回: 憧れの部屋 – なりたい自分を描く

  第2回: 憧れの部屋 – なりたい自分を描く
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夢と絆を刻む部屋

第2回: 憧れの部屋 – なりたい自分を描く

夢と絆を刻む部屋

家には、そこに住む人の雰囲気・趣味・趣向が表れる。逆に、その家をみることで、「こういう感じの人が住んでいるのかなぁ」と住人のイメージを抱くこともあるだろう。住み手と家のイメージは相互に影響し合い、全体の生活像を形作っていく。そう考えると、自分の部屋や家を作ることは「自分らしさ」を作ること、つまり自分自信への「愛」に繋がる。

「かっこいいなぁ。」

手元にあるデザイン雑誌を開いて、アキはそう呟いた。彼女は、イラストレーターになる夢を抱きながら、東京にあるデザイン系の大学に進学し、一人暮らしを始めたばかりだ。デザインに関する知識や情報を少しでも吸収しようと、自宅の最寄り駅近くにある商店街の本屋で、デザイン雑誌の最新号を買った。その雑誌では、飛ぶ鳥を落とす勢いの新進気鋭のデザイナーの自宅特集が組まれていた。アキは、そこに載っているデザイナー達に漠然とした憧れを抱きつつ、彼らが住む住空間の鮮やかさに目を奪われた。

「私の部屋とは全然違うな…。」

誌面をパラパラめくりながら、自分の部屋を見渡し、ため息をついた。アキの部屋は、いわゆるワンルームであり、その中には作業用の机と椅子、ベッド、冷蔵庫などの必最低限の家具が置かれていた。よく言えば、広々としている、悪く言えば、殺風景、そんな印象である。床はフローリング仕上げになっているが、モノがなにもない分、整然とはしているが、足元に伝わる感覚が、どこか冷たい。

「私、、、こんな人達みたいになれるのかな。」

自宅に感じる物悲しさと、将来への不安が、重なり、再びため息をついた。進学することで、夢であるデザイナーへの第一歩を踏み出せたと思ったものの、東京での生活がもたらす情報量の多さ、デザインにおける同級生や先輩のレベルの高さに圧倒される毎日が続き、自信を失いかけていたのだ。そうした閉塞感を打開するヒントがないものかと、手にした雑誌であった。特集が組まれていた数人のデザイナーの自宅は、それぞれスタイルが違っていた。あるデザイナーの部屋は、部屋の壁・床・天井の仕上げ、そこに置かれている家具は全て白一色で統一され、モダンなイメージを纏っていた。別のデザイナーの部屋は、元々、オフィスだった空間を改修し、天井・壁は構造体であるコンクリートが剥き出しになっており、床に新しく敷かれたフローリングが、そこに生気を与えている。どの部屋にも、洗練さ、力強さ、柔らかさなど、その住人であるデザイナーの作風との共通性を感じた。

「部屋作りも表現の一つなんだ、、、!」

デザイナー達の居住空間を見ていると、その生活スタイルにもそれぞれの価値観が表れている。アキは、自分の部屋を変えることが、憧れの人たち、つまり「なりたい自分」に近づくための手段の一つだと感じた。部屋を作ることで、将来の自分を描くのだ。そう考えると、雑誌を眺める視線にもぐっと力が込もった。「ここに自分の未来がある」、そう感じられたからだ。ページを一枚一枚めくっていると、アキは一人のデザイナーの暮らしに目が止まった。無駄なモノが置かれておらず、すっきりとしているが、木の素材で作られたソファ・ベッド・棚、麻のラグが部屋全体に統一感と活気を与え、大きな掃出窓の前に置かれた観葉植物が、室内に鮮やかな光をもたらしている。簡素だが、瑞々しく優しい空気が流れているような印象がした。そして、どこか懐かしい。スタイルとしては、一般的に「北欧モダン」と呼ばれるものだ。

「私もいつか。」