コロナ禍がインテリア業界にもたらした光と影

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カヴァース編集部

【連載】コロナ禍に立ち向かうインテリア業界の現在地

コロナ禍で大きなダメージを受けた業界は少なくない。特に観光業界や飲食業界への影響は深刻で、多くの企業や店舗が売上を大幅に落とした。

一方ライフスタイルの変化による特需で、家具・インテリア業界は売上が好調に推移。しかし最近では、複数の外的要因により逆境に立たされている。

このシリーズでは、コロナ禍に直面した家具・インテリア業界の現状をレポート。「おうち時間」を快適にする家具についても解説する。

コロナ禍が追い風になった家具・インテリア業界

外出・移動自粛要請や営業時間短縮要請などにより発生した、コロナ禍特有の「外出しにくい状況」は、家具・インテリア業界にとっては強力な追い風となった。自宅で長時間過ごすことを余儀なくされたことにより、「自宅をより快適な場所に整備したい」というニーズを生み出したのである。

コロナ禍で新たに生まれたこの「巣ごもり需要」の拡大により、国内の家具・インテリア業界は大きく売上を伸ばした。さらに2020年5月から国民全員を対象に行われた、特例定額給付金(10万円)の給付も消費を刺激。普段は躊躇しがちな、高価格な耐久財である家具の買い替えを後押しした。

コロナ禍で急速に広まった在宅ワークも、家具・インテリア業界の売上を押し上げた。作業用のデスクやワークチェアなど、自宅を仕事場として使う際に必要な家具への需要が高まったのだ。オフィスの改装や移転の件数が減ったため、オフィス用家具の売上は減少したが、業界全体では好調に推移した。

しかし2021年度は、コロナ禍が生み出した家具への特需はやや落ち着きを見せる。総務省の調査によると、2021年度の家具に対する1世帯当たりの支出(1ヵ月平均)は、前年度に比べて1割弱減少。家具の買い替えや買い足しが一巡し、コロナ特需が終わりに差し掛かったことを示している。

成長を続ける低価格帯メーカー

市場全体を見ると好調を維持している家具・インテリア業界だが、業界内では明暗が分かれている。近年躍進しているのは、ニトリや良品計画、イケアなどの低価格帯を得意とする企業。大塚家具を代表とした高級家具メーカーは苦戦を強いられている。

家具小売業界全体の売上が最も好調だったのは、1980年代後半〜1990年代前半である。この頃は市場規模が2兆円を超える年もあった。しかし1991年をピークに販売額は減少し、2012年には1兆円を下回った。

そういった冷え込んだ市場の中でも、低価格帯のメーカーは売上を伸長。特に業界最大手のニトリは堅調に業績を伸ばし、2022年2月期には35期連続の増収増益を達成した。業界2位の良品計画も売上を伸ばしてきた。2000年に業績不振に陥ったこともあったが、社長交代を機に体質改善を図り、2006年にはV字回復を達成。低価格帯メーカーは、家具小売業界で確固たる地位を築いてきたのだ。

インテリア業界が直面する課題

順調に成長を続けてきた低価格帯の家具メーカーだが、最近はその業績内容に陰りが見てとれる。増収増益を続けてきたニトリだが、2022年2月期において、ニトリ事業の既存店売上高は前年と比べて約1割減少した。「巣ごもり需要」の反動が響いた格好だ。

良品計画も苦戦を強いられている。2022年8月期の決算は、増収減益。国内外への出店増加で営業収益を伸ばしたが、営業利益は前年同期比で約2割減少した。

家具メーカーがおしなべて苦境に立たされている理由は、いくつかある。世界的な物価高騰に加えて、中国のゼロコロナ政策で物流網が混乱。さらにウクライナ危機が勃発し、コスト上昇に拍車をかけた。こうした原材料費や物流費の高騰に、人手不足や円安が追い打ちをかけている。

ただニトリと良品計画は、ともに精力的に海外進出を進めている。中国を中心として、東南アジアへも進出。成長著しいアジア新興国での成否が、今後の業績のカギを握っているといえる。

EC利用の浸透が進むインテリア業界

コロナ禍がもたらしたもう一つの影響が、EC利用の促進である。2020~2021年の間で、インターネットで家具を購入する消費者が増えた。この期間は外出自粛要請が実施されて外出しづらくなり、店舗に足を運ばず買い物ができるネット通販を利用する顧客が増えたためと見られる。

他の業界と比べても、家具・インテリア業界は、EC化が比較的進んでいる。経済産業省の調査によれば、2021年の生活雑貨・家具・インテリア市場のEC化率は28.25%。3割弱の企業が、ネット通販を利用していることになる。

2021年には外出する機会が増えていたが、EC化率は前年度比で6.71%増加した。これは顧客の間で、ネット通販の利用が浸透してきたことを示している。消費者の間で「家具をネットで買う」ハードルが下がっているといえるだろう。

【出典】
総務省統計局「家計消費状況調査 調査結果」
一般社団法人 日本家具産業振興会「家具小売業の年間商品販売額」
経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果」

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