コロナ禍を追い風に躍進するオフィス家具メーカー

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カヴァース編集部

コロナ禍で、多くの人の働き方が変わった。オフィスに出社せず、自宅で働く「リモートワーク」が増加。そんなワークスタイルの変化に大きな影響を受けたのが、オフィス家具メーカーだ。

オフィス縮小のあおりを受け、各社の業績悪化が予想された。だが蓋を開けてみると、売上は好調に推移。その裏側には、オフィスの使い方の変化があった。本記事では、コロナ禍がオフィス家具メーカーに与えた影響とその要因に迫ってみよう。

オフィス家具メーカーの上位3社とは?

まずはオフィス家具業界における、売上高上位3社を見てみよう。

2021~2022年のオフィス家具メーカー売上高ランキングは、以下のとおりである。

  • 1位:コクヨ
  • 2位:オカムラ
  • 3位:イトーキ

2022年3月期の売上総利益を比べてみると、コクヨが1161億円、オカムラが773億円、イトーキが435億円となっている。業界首位のコクヨは文房具のイメージが強いが、ファニチャー事業の売上が43%を占め、オフィス家具販売や空間づくりの提案に力を入れている。

また上記3社にウチダを加え、「4大オフィス家具メーカー」と呼ばれることも多い。

コロナ禍がオフィス家具メーカーに与えた影響

オフィス家具は、一般的に企業向けに販売される。そしてその導入コストは、景気減退期には削られる傾向が強い。そのためオフィス家具の売上は、景況感や業績などに大きく左右されるのである。

実際にコロナ禍真っ只中の2020年では、オフィス家具の売上は前年比約10%減少。コロナ禍でオフィスの縮小が進み、オフィスの移転や改築も一時中断したためだ。中にはオフィス自体をなくす企業もあった。オフィス空室率も上がり、オフィス家具メーカーは苦境に立たされた。

オフィス家具業界は、急激な売上高の落ち込みに見舞われるかと思われた。しかし、結果は違った。各社とも堅調に業績を伸ばしたのである。オカムラにいたっては、過去最高益を叩き出した。2021年3月期の決算を見てみると、営業利益・経常利益ともに前年比約5%増加。過去最高額に達した。

この躍進の大きな理由の一つが、オフィスの使い方の変化だ。コロナ禍でリモートワークが定着したことで、オフィスが「人とコミュニケーションをする場」としての意義を強くした。企業は、社員同士の自由なやり取りの中で、柔軟な発想が生まれることを期待しているのだ。そのため、フリースペースやカフェスペースの増設に注目が集まっている。

リニューアル需要で波に乗ったオカムラとコクヨ

オカムラでは、可動式のデスクやチェア、社員がディスカッションを行うオープンスペースなど、よりフレキシブルなオフィス空間づくりを提案。従来型のオフィスをリニューアルするニーズの掘り起こしに成功した。

またコロナ禍で売上を伸ばしたのが、オカムラの「テレキューブ」。これは電話ボックスのような形の個室空間で、人との接触を減らしたいコロナ禍にうってつけの商品であった。

コクヨもリニューアル需要の取り込みに成功。2021年12月期の決算では、売上高をコロナ前の水準まで戻し、営業利益は約3割増加。オフィス家具部門の売上も好調に推移した。オフィス縮小によって苦境に立たされたオフィス家具メーカーだったが、新しいスタイルのオフィス空間へのリニューアル需要によって、波に乗ったのである。

在宅ワークの浸透がさらなる追い風に

コロナ禍で一般的になった在宅ワークも、オフィス家具メーカーにとって追い風となった。従来は一般的にオフィスのみで使われていたオフィス家具だが、在宅ワークが定着するにつれ、自宅への導入ニーズが高まったのだ。実際に、コロナ禍の「巣ごもり需要」に対応したソファやマッサージチェア、ベッドだけでなく、オフィス家具のデザイン出願率も増加した。

コンパクトなデスクやオフィスチェア、机上ラックなど、自宅で快適に仕事をするための家具の売上が伸長。その中でも特に注目を集めたのが、回転式のオフィスチェアである。

2020年、コクヨのECモールサイトでの回転イスの売上は、前年比のおよそ3倍を記録した。自宅での勤務環境を整えるにあたり、「まずはイスを」と考えた人がもっとも多かったことがうかがえる。そして回転イスの中でも、高価格帯の商品に人気が集まり、売上の半分を占めた。在宅ワークが長く続くと予想し、機能や座り心地にこだわる消費者心理を反映している。

人気の在宅ワーク向けオフィスチェア

オフィスチェアの品質や機能は肩こり・腰痛の防止や集中力アップに直結するため、ハイグレードな商品に人気が集まった。

オカムラのオフィスチェアでは、「Sylphy(シルフィー)」が人気である。シルフィー最大の特徴は、「バックカーブアジャスト機構」。背もたれのカーブを2段階で調節して、腰回りのフィット感を高める機能だ。

オカムラ最上位チェアといえば、「Contessa seconda(コンテッサセコンダ) 」。イタリアのデザイン会社「イタルデザイン」とコラボレートして生まれた、機能とデザインを両立させたオフィスチェアである。

一方コクヨの人気商品「ing(イング)」は、ユニークなコンセプトを持っている。それは「座りながら体を動かせるイス」。座面が360°動くため、姿勢の変化に柔軟に追従する。座りすぎで気になる運動不足解消に役立つオフィスチェアだ。

「まずは安価なオフィスチェアを試したい」というニーズに応えるのは、コクヨの「ENTRY(エントリー)」。ランバーサポート付きの入門的なアイテムで、価格は2万円台。別売りの可動肘やヘッドレストを追加すれば、本格的なオフィスチェアになる。

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