ウッドショックとは?木材価格高騰の原因と今後の見通し

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カヴァース編集部

コロナ禍以降、ニュースでも度々取り上げられた「ウッドショック」という言葉を聞いたことがあるだろうか。ウッドショックとは、輸入木材の供給不足と価格高騰現象だ。その影響は日本にも飛び火し、建築・住宅業界に大混乱を巻き起こしたのは記憶に新しい。

このシリーズでは、そんなウッドショックの原因と見通しや、ウッドショックを契機に盛り上がっている国内家具への回帰機運についてレポートする。シリーズ第1回となる本記事では、関連する統計情報を交えながら、「ウッドショックとは何か」に迫っていこう。

ウッドショックとは?

ウッドショックとは、建築用木材の供給不足によって引き起こされた価格高騰現象である。その名前は、1970年代に起きた「オイルショック」にちなんで名づけられた。

輸入木材の価格が高騰したため、住宅建築の費用も上昇。新築戸建住宅の販売数に悪影響を及ぼした。

新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、2020年4月に急激に落ち込んだ新築戸建住宅売買業であったが、その後回復基調に向かう。だが同年8月にピークを迎えた後、再び急落。これはウッドショックの影響と考えられている。

ウッドショックの原因

経済や社会に大きな影響を与えたウッドショックだが、その原因はおもに2つある。アメリカでの住宅建築需要の急増と、コンテナ不足である。

アメリカにおける住宅建築需要の急増

2020年、アメリカでは新型コロナウイルス感染症拡大で外出を制限され、多くの人がリモートワークへ切り替えた。その結果、郊外への引っ越しや自宅のリフォームを希望する人が増加。低金利政策もその動きを後押しした。

2020年後半にかけては住宅建築許可数が急増し、例年の1.5倍以上まで伸長する。さらに原料がもともと不足気味だったところに製材所の休業が重なり、建築用木材の需要が急増。木材価格の高騰を引き起こした。

コンテナ不足

2つめの原因は、アメリカにコンテナが滞留したことによるコンテナ不足である。2020年末、巣ごもり需要に対応してアメリカへの輸入貨物が急増。さらに港湾作業員が不足し、コンテナ処理能力が低下した。

こういった要因に加えて、コロナ禍以前からコンテナ生産量が下がっていたこともあり、コンテナが不足したのである。コンテナ不足は海上輸送に混乱をきたし、コンテナの海上輸送運賃も急上昇した。そしてその増額分は、木材価格へ転嫁されたのである。

ウクライナ危機で長期化も

2022年に入ってからは、ロシア産木材の輸入も難しくなっている。原因となったのは、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻である。欧米諸国が中心となってロシアへの経済制裁を講じ、ロシア産の木材が手に入りにくい状況が続いている。

ロシアは、世界の木材供給量の21%を占める。木材輸出額で世界第4位の木材輸出大国なのである。日本では、ロシア産木材は製材用材消費量の5.7%と少ないものの、経済制裁措置はいつまで続くか不明瞭だ。林野庁もウクライナ情勢による木材供給量の低下に触れ、「対応策の検討が必要な状況」と説明している。

ウッドショックで木材価格はどれくらい高騰したのか?

長期化が懸念されているウッドショックだが、国内に流通する木材の価格はどのくらい高騰したのだろうか?輸入木材価格の推移を見てみよう。

林野庁の『令和3年度 森林・林業白書』によれば、輸入木材の価格は2021年を通して上昇傾向が続いた。例えば、カナダ製材品の価格は同年10月にピークを迎え、前年同月と比べて2倍以上まで上昇。EU製材品はやや安価で推移したが、上昇傾向は同じく継続して見られた。

輸入木材の価格高騰は、国産木材の価格にも大きな影響を及ぼした。丸太を例に取ってみると、国内価格は前年比35%上昇。これは輸入価格の上昇率である23%よりも高い水準で、輸入木材から国産材への切り替えが進んだことを示している。

丸太の中でも特に価格が高騰したのが、ひのき材の丸太である。2021年9月には、ひのき材丸太の価格は前年末と比べて76%上昇した。

ウッドショック終息の見通しは?

2021年を通して値上がりを続けた輸入木材。同年末には、北米産木材の価格は前年同月比135%を記録した。欧州や北洋産の木材も軒並み上昇を続けたが、2022年に入ってからは下落基調に。ピークアウトを思わせる値動きを見せた。ただ米国からの輸入木材価格はほぼ横ばいであり、高止まりの傾向にある。

続いて、国内産の木材を見てみよう。2022年以降、丸太の国内価格はほぼ横ばいで推移した。2021年に輸入木材が国内木材に置き換わり、その動きが落ち着いてきたと見られる。2021年半ばに急激に上昇したひのき木材の価格も、同年後半に下落。ウッドショックを受けて、通常よりも多く在庫を確保しようとしたため、一時的な需要の急増が起こっていたと考えられる。

輸入木材・国産木材ともに価格高騰の局面から脱しつつあるが、価格下落のスピードは緩やかだ。それにともない、新築戸建住宅の取引も低調で推移している。木材の国内価格は当面の高止まりが予想されており、世界情勢から目が離せない。ウッドショックの完全終息には、まだ時間がかかりそうである。

【出典】
経済産業省『新型コロナがもたらす供給制約;ウッドショックの影響』
経済産業省『いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?』
経済産業省『どうなったウッドショック;価格の高止まりが需要を抑制?』
林野庁『令和3年度 森林・林業白書』

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