注目が集まる国産木材と国産家具への回帰

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カヴァース編集部

世界中を混乱に陥れたウッドショック。日本でも、建築費用の増加などの悪影響を受けた人は少なくない。そして、ウッドショックは意外なところにも波及した。国産家具への回帰である。

本記事では、なぜウッドショックで国産家具に注目が集まっているのかを解説する。増産が期待される国産木材活用の現状や、国内林業の課題もあわせて見ていこう。

ウッドショックを機に需要が高まる国産木材

日本は国土の2/3が森林に覆われた、森林大国である。森林率は68.4%で、OECD加盟国中3位だ。であるにも関わらず、木材調達の多くを輸入に頼っている。林野庁の調査によると、2021年の木材自給率は41.1%。国内に流通する木材の6割近くを、輸入木材が占めていることになる。

しかし、ウッドショックで輸入木材が手に入りにくくなったことにより、国産木材への切り替えが進んだ。2021年、国産材の需要が高まるにつれ価格も上昇。同年9月には、国産の木材・木製品の価格は前年末比47%もの上昇を見せた。

国内林業が抱える課題

ウッドショックで需要が急増した国産木材だが、実はすぐに供給を増やすのは難しい状況にある。国内の林業は、複数の課題を抱えているからだ。

低い木材自給率

前述した通り、日本の木材自給率は41.1%。2002年には18.8%まで落ちて底を打ち、徐々に回復してきている。とはいえ、豊富な森林資源をフルに活用できているとは言えない状況である。

その理由は、長年安価な輸入木材に頼ってきたことだ。輸入材と競合するうちに、国産材の価格は下落。1980年をピークに、下落基調が現在まで続いてきた。2021年にはウッドショックの影響で需要が増え、価格が上昇したが、それでもピーク時の約3分の1である。採算性が悪化し、日本の林業は衰退の一途をたどった。

労働力不足

数十年にわたって輸入木材に依存してきたため、林業従事者も減少。林業経営体は、2005~2020年の間に5分の1以下になった。1980年に14.6万人いた林業従事者は、2015年には4.5万人にまで減少。林業全体で、他業種よりも速いスピードで高齢化も進んでいる。人手不足が深刻なため、国内材への需要が高まっても、即時対応するのは難しいのが現状なのである。

低迷する林業だが、日本の森林面積は増えている。人工林は50年でおよそ6倍にまで増加。戦後に植えられたスギやヒノキが育ち、利用に適した時期を迎えているのである。この豊富な森林資源を活用し、なおかつ計画的に再造成する必要がある。

国産木材供給を安定化するために

採算性の低さや人手不足など、様々な課題を抱えた国内林業だが、ウッドショックを機に国産材への切り替えを望むニーズが高まっている。その現状を踏まえ、林野庁は2022年に「国産材転換支援緊急対策事業」を開始した。事業内容は、おもに下記の2つである。

原木・製品の運搬や一時保管への支援

国産材をスムーズに流通させるため、原木・製品の長距離運搬費用を助成する。また増産した木材の一時保管場所が必要になるため、一時保管にかかる経費も対象。

国産材製品への転換を図る設計・施行方法の導入への支援

建築用木材の転換を促進する支援策。輸入木材を国産材に切り替えた際に発生する、木材調達方法や仕様・設計の変更にかかる経費を助成する。

国は「国産材転換支援緊急対策事業」を通じて、需要が高まる国産材の増産・流通を後押しするねらいだ。

さらに林野庁では、国産材のサプライチェーンを強化するなどして、「海外市場の影響を受けにくい木材需給構造を構築することが重要」としている。官民一体となって、国産材の供給安定化に向けた取り組みを進めていくことが求められているのだ。

売上にも反映される国産家具への回帰ムード

また輸入原材料の高騰に伴い、消費者の間でも国産の商品に注目が集まっている。国産の材料を使用して作られた、高品質なものを求めるニーズが高まっているのだ。こうした「本物志向」への意識の変化は、長い時間を共に過ごす家具を選ぶ際にも表れ、数字にも反映されている。

実際に家具通販専門店「カヴァース」では、国産木材を使用した商品や日本製の商品への人気の集中と注文の増加が起きており、販売台数は昨年比5倍となっているという。特に、職人が国産材を使用して作ったベッドやダイニングテーブルなど、「長く使える家具」への関心と注文が増えているそうだ。

「カヴァース」では「国産」や「日本製」というキーワードを冠した商品の販売台数が大きく伸長。「国産」「日本製」のいずれかの単語が入った商品の販売台数は、2021年3月では22台。対して、2022年3月における販売台数は104台と約5倍に増加した。

ウッドショックが表面化したのは2021年3月。この時期からの販売台数が順調に伸び続けていることから、国産材を使用した家具や日本製商品への関心が高まりがうかがえる。

【出典】
林野庁「『令和3年木材需給表』の公表について」
林野庁「森林・林業・木材産業の現状と課題」
林野庁「スギ・ヒノキ林に関するデータ」
経済産業省『いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響?』
全国木材組合連合会「国産材転換支援緊急対策事業」

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