なぜ家具は値上がり続けているのか?その複雑な原因に迫る

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カヴァース編集部

実は、価格が高騰しているのは住宅だけではない。家具も値上がりし続けているのだ。その原因は複雑で、ウッドショックだけでは説明できない。今回は、その複雑な原因を紐解いていこう。

家具の値上がりはウッドショックが原因ではない?

2021年以降、家具も値上がりを続けている。業界最大手のニトリは、2022年9月に一部商品を1~2割値上げすると発表。2022年は他の家具メーカーも軒並み値上げに踏み切ったうえ、輸入家具も価格が上昇した。

この状況を見て「家具の値上げにも、ウッドショックが影響しているのではないか?」と感じるかもしれないが、実は直接的な因果関係はない。なぜなら、建築用木材と木製家具向けの木材は種類が違うからだ。建築用木材には、「ソフトウッド」と呼ばれるマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹が使われることが多い。これらは軽くて柔らかく、まっすぐ育つ特徴がある。住宅の柱や梁(はり)に加工されている。

一方木製家具に使われるのは、主に「ハードウッド」と呼ばれる広葉樹で、ケヤキ、ブナ、タモなどである。こちらは重くて硬く、丈夫なため、家具やフローリングなどに加工されることが多い。

そしてウッドショックで値上がりしたのは、北米産のSPF材(トウヒ、マツ、モミ)やホワイトウッドなどで、どれも針葉樹だ。建築用木材として使用されるものばかりだったのである。

ただコロナ禍で生じた輸送の混乱や、中国の輸入量増大により、広葉樹木材の価格も上昇。「おうち時間」が長くなるにつれて木製家具の人気も高まり、さらなる需要増につながった。そしてそこへ追い打ちをかけたのが、急激な円安と原油価格の高騰である。

値上げの主な要因は「円安」と「原油高」

前述したニトリの値上げも、この円安と原油高を理由に行われた。円安は、原材料の輸入や海外生産を行っているメーカーにとって大きな痛手であり、企業努力だけでは上昇したコストを吸収しきれなくなったのである。

2022年3月から始まった円安傾向。同年10月には一時1ドル=150円台をつけ、32年ぶりの水準を記録した。この歴史的な円安で、食品から日用品、インテリア用品にいたるまで、多くの品目で値上げラッシュが起きた。家具も例外ではなく、円安を理由に値上げを余儀なくされたメーカーは多い。

さらに無視できないのが、原油価格の高騰である。原油価格は2021年から上昇し始めた。原因は、コロナ禍で冷え込んだ需要が回復し、原油需要が急激に高まったためと見られている。

そして2022年2月に始まった、ロシアによるウクライナへの侵攻が追い打ちをかけた。主要な産油国であるロシアに経済制裁が課せられ、原油輸出ができなくなるのではないかという懸念が生まれ、原油価格を上昇させたのだ。原油価格が高騰すれば、製造や輸送コストも上がる。そしてその上昇分は、製品価格に上乗せされるのである。

ウクライナ危機は依然として続き、先が見通せない状況だ。建築・住宅・家具業界の受難は続く。今後も、世界情勢を注視していく必要があるだろう。

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