インテリアとして成立する暮らしに馴染む防災
【連載】防災の観点からインテリアを提案
- 【第1回】 インテリアとして成立する暮らしに馴染む防災 ←今回はココ
- 【第2回】 災害に強い部屋づくりが必要な理由
- 【第3回】 今からできる!住まいの防災対策ポイント
これまで、なかなか「防災」と「インテリア性」を両立できるアイテムを見つけることができなかった。「防災」を考えるなら、見た目よりも機能重視で、少々デザイン面は妥協したアイテムをという選択肢しかなかったのである。しかしうれしいことに、空間に馴染むインテリア性を重視した防災アイテムも登場し始めている。「心地よく暮らしながら災害に強い部屋を作る」という希望が叶いつつある。
今回は、防災意識を保ちつつ好みのインテリアを構築していく方法について解説する。
妥協しないアイテムで美しい防災を
先述したが、これまでの防災アイテムは、機能を重視していたため、「ゴツい」「悪目立ちする」などの声が多かった。
こうした意見をくみ取り、多くのメーカーが、商品機能のアップデートに加えて、より洗練されたデザインを目指して商品開発が行ってきた。その結果、お洒落で洗練された防災アイテムが増えてきたのだ。2つの例を紹介しよう。
美しいポール器具
家具転倒防止によく使われる、突っ張り式のポール器具。タンスや食器棚の転倒防止に役立つが、これまでのポール器具は、どこか垢抜けないイメージがあった。
しかし平安伸銅工業株式会社 (*1)から2020年6月に発売された「家具転倒防止ポール」は、そんなイメージを払拭した、シンプルで洗練されたデザイン。光沢感を抑えたマットな色調で、シンプルな空間にすんなりと馴染む。キャップやネジなど細部にわたるデザインまで美しい。インテリア性を損なうことなく使えるのがうれしいアイテムだ。
スタイリッシュなテレビスタンド
GOOD DESIGN賞を受賞しているテレビスタンド(*2)が、震度7耐震試験合格済みだと知ったら、興味がわくに違いない。
「すっきりレイアウト 背面収納付壁よせTVスタンド ハイタイプ V3」は、シリーズ累計40万台突破している人気アイテムだ。大型テレビを設置しても省スペースに置けるうえ、配線や電源タップをすべて背面に収納できる。スタイリッシュモダンなデザインと、震度7をクリアしたという安全性が結びつき、妥協したくない消費者に選ばれている。すでにある大型テレビの耐震強化としても取り入れたいテレビスタンドだ。
これから家具を選ぶなら
新生活をはじめたり引越したりする際に、新たに家具の購入を考えているなら、大地震で被害を出しにくい家具を選ぶことも視野に入れよう。「防災」というワードをプラスして好みのテイストの家具を探すと、安心安全、かつ自分に合ったインテリアを手に入れることができる。
背の低い家具を選ぶ
背の低い家具は重心が低いので倒れにくく、移動しにくい。万が一倒れても頭の上に倒れこんでくるような危険がないため、すぐに避難できる。
耐震機能付き家具を選ぶ
扉に耐震ラッチが付いている食器棚や本棚なら安心だ。耐震ラッチとは、地震を感知すると、扉をロックして、収納物が飛び出すのを防ぐストッパーのこと。引き出しが前に飛び出し、扉が開いて物が飛び出して怪我するのを防いてくれる。
アイテムそのものが耐震の役割を果たしてくれるものもある。突っ張り面で転倒を防ぐ家具に上置きする収納家具は、地震対策としても機能するし、収納スペースも増えて一石二鳥だ。
引き戸タイプの扉を選ぶ
地震の揺れで前に開いてしまう開き戸よりも、引き戸タイプの扉を選ぶと防災になる。
引き戸タイプの食器棚なら、扉を開けるスペースも必要ないので、コンパクトなキッチンやワンルーム住まいなら、なおさらおすすめだ。
ガラス飛散防止フィルム付きを選ぶ
衝撃で破れて飛散したガラスはとても危険。ガラスが割れても破片が飛散しない飛散防止フィルムが貼られている家具なら、鋭いガラス破片の飛散や脱落による二次災害を防止できる。
ブックガード付き棚板を選ぶ
オープン書棚の場合、ブックガードがついているものを選ぶと防災に役立つ。ブックガードとは、本棚に取り付ける金属製の細いポールのこと。収納した本より手前に設置することで、ストッパーの役割を果たすものだ。
落下の危険性が高い背の高い本棚を置く場合には、ぜひチェックしてほしい機能である。
耐衝撃性に優れた素材を選ぶ
シリコーンゴムを使用した照明なら、転倒や落下しても破損はしない。耐衝撃性や耐熱性に優れているので、万が一の時も安心だ。
防炎性能アイテムを選ぶ
防炎性能とは、小さな炎が接しても焦げるだけで容易に着火せず、たとえ着火したとしても容易に燃え広がらない性能のこと。
防炎性能アイテムなら、地震の際の火災発生や拡大を防いでくれる。防炎カーテン、防炎じゅうたん、防炎マットレスなど、防炎アイテムは多岐に渡る。
特別ではない、暮らしに馴染む防災を
いつ大地震が来てもおかしくない時代。いつ来るか予測できない大地震。
だからこそ、防災対策は万全であるとともに、暮らしに馴染んでいなければならない。インテリア性も妥協せず、防災対策を取り入れることは可能になっている。家具屋は、今後さらにアップデートしていくアイテムに目ざとくあり、防災に関する啓蒙活動に携わる必要があるだろう。
【出典】
(*1) 平安伸銅工業株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役:竹内 香予子)
(*2)「すっきりレイアウト 背面収納付壁よせTVスタンド ハイタイプ V3」
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