【秋田木工のテーブル&チェア】音楽家夫婦の思い出が調和する空間

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カヴァース建築部

日本唯一の専用工房を持つ秋田木工、曲木はその代名詞とも言えるでしょう。木の持つ可塑性を活かしてつくる美しい曲線は空間に描かれる立体的芸術そのものです。その秋田木工から今回取り上げるのは、ナラの無垢材を使用したテーブルとチェア。人間の体にしなやかに沿うような背もたれの曲木のカーブに対し、テーブル・チェアともに空間にスッと伸びる脚の細い線が特徴的な逸品です。この部屋に暮らすのは、フィンランド人の男性指揮者とチェリストの日本人妻の夫婦。二人が日本に移住した邸宅は、夫が幼い頃に遊んだシラカバの森を思わせる静かな森に建てられました。

「深呼吸はいい。ほら立ってごらん、胸いっぱいに空気を吸い込めば、体の中が動き出す。この部屋で呼吸すると森にいる気分だよ、ほら」
「あら、この秋田木工のテーブルはナラ材でしょう。あまり香りはないはずだけど」
「心の鼻で嗅ぐのさ。ほら、日本人は心の目を持っているだろう」

夫が育ったのはヘルシンキ郊外の小さなまち。彼は自宅近くの森で毎日、日が暮れるまで遊びました。秋田木工のテーブル&チェアをはじめ、夫婦が暮らす家に木を多用したのは、夫の強い希望があったからです。一方、妻は金沢の旧家で育ちました。古い民家には土間があり、祖母や母が調理する音を聞いて過ごすのが大好きな少女でした。キッチンやダイニングの床をモルタルで仕上げたのは、汚れがシミつきやすい無垢材のフローリングよりも掃除がしやすく機能的である以上に、妻の「楽しい土間の思い出」を反映したいという思いがあったからです。

秋田木工のテーブル&チェアを置いた、近年人気のモルタル土間のダイニングキッチン

家を建てる時に反映されるのは、お互いの幼い日の思い出。土間や海外風のL字配置のキッチン、薪ストーブなど、夫婦の憧れと思い出が、ふんだんに取り入れたホワイトオーク調の木に調和しています。ダイニングの中央にあるのは秋田木工のテーブルとチェアです。

「世界中で北欧風のインテリアは人気ね。秋田木工のテーブルを含め、木をたくさん使っているのに野暮ったくない。キレイめなものを選んだのが良かったのかしら」
「秋田木工のテーブルとチェアが教えてくれたんだ。調和すること、空間はハーモニーだってことを。木をふんだんに使った空間に調和するのは木。つまり、秋田木工のテーブルとチェアだったんだ。君の属するカルテットと同じ、ハーモニーが居心地をつくるのさ」

横長にとった窓は、料理中の人も秋田木工のチェアに座る人の目も楽しませてくれる

パタン、カチャ、こぽこぽこぽ…妻はホワイトオーク調の壁面収納からカップを取り出し、二人分のルイボスティーを淹れました。床のモルタルや壁面のサブウェイタイルなど、肩肘張らないラフな素材感があふれるダイニング。秋田木工のチェアに座る夫はその音をじっと聴いていました。

「君の言っていたキッチンのオーケストラの意味がわかるような気がするよ。実にたくさんの音が楽しめる。この秋田木工のチェアに座ってそちらを眺めると、窓がいい借景なんだ」
「木の葉がソリストみたいね!そう考えると、調和をテーマにしたこの部屋もそう。リビングの調和は木の脚で、異素材のシーリングファンがソリスト。秋田木工のダイニングではその素敵なテーブルランナーかしら」

円形のテーブルにテーブルランナーを組み合わせるラフなスタイル

木、タイル、モルタルなどラフな素材感が調和するダイニングキッチン。ステップを隔ててつながるリビングにもそのハーモニーは続きます。秋田木工のテーブルとチェアが見せる明るいホワイトオークの色は、木を多用したナチュラルな空間に見事に調和。夫が抱く北欧の思い出と妻の奏でる耳の記憶をひとつの空間にまとめ上げました。

「そういえばヘルシンキの母が喜んでいたよ。次に来日する時は、僕が生まれた時に買ったこのYチェアで孫を抱くんだって」
「あら、来年の春から我が家のソリストはこの子で決まりそうね」

秋田木工のテーブルが奏でる、木のぬくもりあふれる調和の空間。妻はお腹をそっと撫でました。