第2話:　ひとつの方向だけにとどまらない特別な役割

インテリアの先進国はやはり欧米。 

映画やインテリアが好きなら、お気に入りの外国映画のワンシーンに登場するソファは、内容以上に印象に残っているのではないだろうか。例えば、インテリアがかわいい「アメリ」のベルベット素材の赤いソファ。アメリらしいパリのエスプリを感じるお洒落な雰囲気だ。名作映画「ティファニーで朝食を」の主人公ホリーの部屋にある、バスタブをリメイクしたアーティスティックなデザインのソファ。このソファとビビッドピンクカラーのクッションの組み合わせは、60年前とは思えない斬新でモダンな印象だ。

一方で、日本は床座中心の生活様式だったため、ソファ文化が浸透し始めたのは戦後のこと。当時の一般的なソファは応接室に鎮座する、白いレースが掛かった大切なお客様をおもてなしする特別なもの。インテリアやくつろぎとは程遠い現状だった。

マルイチセーリングの目線は違っていた。

1950年の創業以来、インテリアや暮らしの中心になるソファ作りに取り組んできた。マルイチセーリングの持つ、日本人ならではの細やかな発想と確かな技術力は、ソファをリラックスできる快適なくつろぎの場所に昇華させていったのだ。

さらにマルイチセーリングは、早い段階から海外や他業種に目を向けていた。ひとつの方向だけにとどまらない姿勢を示し、画期的なアイデアを武器に世界レベルのソファメーカーへと進化していった。

マルイチセーリングの快進撃を、一部ご紹介しよう。

スタイリッシュなNYのデパートに出展

NYに行けば必ず立ち寄りたくなるファッショナブルでスタイリッシュなデパート、ブルーミングデールズ。1984年に行われた「ジャパンフェアー」にマルイチセーリングは、「jipangu/ジパング」ソファを出展している。「jipangu/ジパング」は、漆器や和紙、焼き物など越前の伝統工芸を取り入れた斬新なアイデアのソファだ。名前のとおり、かなり強くジャポニズムを感じさせる。

1980年代といえば、NYインテリアはポストモダンの全盛期。キース・ヘリングやメンフィス集団を代表とする、明るくポップな色柄が特徴的なトレンドだった。これまでの既成概念を打ち崩す自由なポストモダンを好んだNYは、自由な発想でアバンギャルドな「jipangu/ジパング」を見て驚き、賞賛したのだ。

満を辞してミラノサローネへ

毎年4月（2022年度は6月）に開催される世界最大規模の家具見本市ミラノサローネ。この時期、ミラノの街全体が「MIlano Design Week」と呼ばれるデザインの祭典で盛り上がる。

マルイチセーリングは、2007年と2008年と2年連続でミラノサローネに出展している。厳しい経済産業省の輸出支援事業審査に合格しての出展だ。

ミラノサローネに出向くというのは、ほとんどの日本のメーカーやデザイナーにとって、最新のトレンドやインスピレーションを感じとることを意味する。有名・新鋭デザイナーのインスタレーションを五感で味わい、今後のアイデアに役立てようとするのだ。

そんな中、自分たちの作ったものを展示して見てもらうというのは、大きな自信がないとできないことだ。ミラノサローネのジャパンブースでマルイチセーリングは、「WASHI-SOFA」を出展。古くから伝承されてきた日本の美意識に基づく伝統を革新的に表現しつつ、繊細で丁寧な日本のモノ作りをアピールできた。こうして海外にもマルイチセーリングのフィロソフィーは浸透しはじめる。

WASHI-SOFAの画像が欲しいです

異業種・家電メーカーとも手を組む

マッサージソファの画像が欲しいです

インテリアと家電の関係は密接だ。ようやく最近、インテリアにあったデザインやカラーのお洒落な家電を選ぶ選択肢が増えた。うれしいことだ。

早くも2011年に、マルイチセーリングは家電メーカー「パナソニック」とコラボレーションして、マッサージソファを発売している。

マッサージソファは大きくて無骨なイメージがある。温泉施設や健康ランドなどに置かれている、少しダサいイメージ。家で疲れをケアしつつリラックスしたいと思っても、なかなか手が出せないアイテムだ。マルイチセーリングは、このマッサージソファに専用のカバーセットを組み合わせることにより、インテリアに馴染むお洒落なソファへとアップデートすることに成功。本体カバーとクッションカバーの組み合わせで、684通りのデザイン・カスタマイズを可能にした。自分好みのオリジナル・マッサージソファを部屋に迎え入れることができるようになったのだ。

そしてマルイチセーリングならではの提案が、お洒落なトータルインテリア空間に仕上がる、オリジナル家具も用意したこと。マッサージソファに合わせて、シックモダン・ナチュラルモダン・カジュアルモダンの3タイプから選べ、コーディネートを楽しめるようにした。マッサージも楽しみつつ、ライフスタイルも充実させる…暮らしの空間を格上げしてくれる仕組みだ。こうして、マッサージソファはインテリアに溶け込み、家具になった。

マルイチセーリングが普通のソファメーカーとは違うことを、お分かりいただけただろうか。マルイチセーリングは創立当初から、誰もやらないことにいち早く目を向け、実行し、ライフスタイル提案の先駆者としての特別な役割を担ってきたのだ。