第0話:　プロローグ － 秋田木工の「魔術」

プロローグ － 秋田木工の「魔術」

創業1910年の秋田木工は100年以上の歴史を刻み、「曲木（まげき）」と呼ばれる技術を専門としている家具メーカーだ。実は、「曲木」を専門としている工房は、日本で唯一秋田木工だけなのだ。

「曲木」とは、読んで字の如く、木を曲げる技術のこと。口にするのは簡単だが、よく考えてみると、硬く真っ直ぐ成長した木を曲げるのは容易なことではない。変幻自在に曲がっている木を見ても、どのように曲げているのか全く想像がつかない人の方が多いだろう。

秋田木工の職人たちはまさに「魔術師」と言っていいだろう。まるで「魔術」を使っているかのごとく、木を思った通りの形に曲げていく。人間の体は全ての箇所が曲線で成り立っている。ということは、体に合うように座り心地の良いチェアを作ろうと思えば、木材も曲線を描くように仕上げなければならない。しかも木を曲げる作業にかけられる時間は、5分以内と決まっている。5分以内に思うような形に曲げないと、もう曲がらなくなってしまうのだ。

100年以上にわたり、木を曲げる技術をひたすら磨き続けている秋田木工。この会社は只者ではない。