第1回: 地球の中の部屋

  第1回: 地球の中の部屋
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住空間が持つ気分

第1回: 地球の中の部屋

住空間が持つ気分

地球の中の部屋01「はぁ…. 最近うまくいかないな…」

少し憂鬱そうに里美は部屋の片隅をじっと眺めていた。彼女は、都内企業に今春から働き出した。所謂、新社会人というやつだ。地方の大学卒業後上京し、慣れない土地・慣れない業務・慣れない人間関係の中での模索が続いていた。彼女は、自分の部屋の中で、ぼーっと毎日の生活について考えを巡らした。

「家にいても落ち着かない。ちょっと外に出よう。」

里美は、陰鬱な気分が部屋に充満しているような気がしていた。空間は、そこに住む人々の気分と連動している。陰鬱とした気分から抜け出すために、彼女は駅前の商店街に向かった。商店街は、駅前の再開発でできた複合施設と昔ながらの小さな店舗が集まっており、新しさと懐かしさが交じり合った独特の雰囲気を持っている。どこか街の空間にも人の気分が反映されているようだ。外に出ると、そのような気分に出会えて、心地良い。見知らぬ人達の気分が漂う街の中を歩きながら、彼女はとある書店に入った。書店は、商店街にある昔ながらの店舗の一つであり、そこに流れる気分にも、これまでの時間が堆積したような深みがある。本棚には、話題の書籍から過去の名作まで、過去と現在をつなぐかのように、空間に時間を刻み込まれていた。そこに置かれた本に目を通す中で、ふと一冊の本が目に飛び込んできた。

「風水ね…」

空間が持つ気分03風水と住空間について書かれたその本がなぜか、里美の心を惹きつけた。風水については雑誌やテレビ・インターネットなどで漠然と知ってはいたが、具体的な知識などは持っていなかった。しかし、何か今の自分がもつ気分を変えてくれるような気がして、彼女は頁をめくった。風水には、どうやら「気」という考えがあるらしい。彼女は、ある種の確信をつかみながら、書籍をレジに運んだ。本を読み進めると、風水は「陰陽」と「五行」という二つの考えで構成されているらしいことがわかった。「陰陽」とはそれぞれ明るさ・新しさ、暗さ・古さを意味するものであり、「五行」とは「木・火・土・金・水」という5つの異なる意味を持った属性である。これら5つの属性の集合により、人の運気が上がったり下がったりするというのだ。

「私の部屋はどうなっているのかな。部屋を変えれば運気も変わるかも。」

里美は、本を片手に、自分の部屋の現状を確認していく。風水と住空間の関係を考えるとき、やはり「陰陽」と「五行」が重要になってくる。空間の持つ方位が「五行」と強く関係し、その組み合わせが悪いと「陰陽」のバランスを崩してしまう。しかし、東西南北の4つの方位が、それぞれ同じくらい大切なのではなく、部屋それぞれによって、重要な方位があるらしい。

「なるほどなぁ。方位が重要なんだね。部屋にも個性があるんだ!」

空間が持つ気分04玄関が置かれた位置に対して、相対する逆側の面を「座山」と呼ぶ。例えば、玄関が北にある里美の部屋では、座山は南となる。里美の部屋の個性は、南の方位が持つ属性に深く関係している。南は、五行の「火」の方位に該当するため、里美の部屋は「火」が司る美や知識に関する運気を基本的な性格として持っている。この性格に反するモノが部屋にあふれていると、部屋全体の運気が下がってしまうらしい。部屋が持つ個性と、部屋に置かれた家具やモノの全体の調和が重要なのだ。彼女は、ざっと自分の部屋を見渡した。モノが統制なく乱雑に置かれ、雑然とした気分になるのも仕方がないなと思い改めた。

「まずは片付けるか…」

空間が持つ気分05風水では玄関から気が入ってくると考える。玄関から、部屋の対角に気が向かい、そこから折り返し、部屋の中心に渦を巻くように流れるという考え方だ。気の通り道を整理整頓し、テーブルや床の上に置かれたモノを部屋の脇の棚に収納し、気の通り道を作る。玄関を開けて部屋に入ると、向かい側に向けた目線に無駄なものが入り込まず、空間がすっきりとした印象だ。

「よしっ!!明日も頑張ろうかな。」

いつのまにか心のモヤモヤが晴れ、開けっ放しにしていた玄関から心地良い風が部屋の中を流れていった。