第4回: 愛の北

  第4回: 愛の北
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住空間が持つ気分

第4回: 愛の北

住空間が持つ気分

恋をすると人は綺麗になるというが、綺麗になると恋をしたくなるともいえるのではないだろうか。恋のキラキラした感情と、内面・外面の綺麗さは連動しているのかもしれない。里美の部屋は、これまでの整理や改変で、すっきりとした空気が流れ、南からの淡い光が充満する心地良い雰囲気が漂っていた。それは、空間だけでなく、住み手にも生き生きとした感情をもたらす。里美は、自分の心の中にある輝きに気づきはじめていた。

「先輩どうしてるかな…」

数日前、部屋の西側にある棚を整理した時に見つけた、かつての先輩からもらったネックレスを里美はじっと眺めていた。受験勉強中の里美を励まし続けてくれた憧れの先輩だった。お互いに自身の気持ちを打ち明けることはなかったが、このネックレスを見るたびに当時の気持ちを思い出す。里美は、かつての思い出に浸りながらも、その目は力強く今を見つめていた。

「楽しまないとねっ!」

愛の北01最近の里美は会社の同僚からも綺麗になったねと評判がよい。生活を楽しく生き生きと過ごしている姿は、内面のみならず外からみても美しさを与えるらしい。何事も楽しもうとする態度は、身だしなみに対するちょっとした感覚を変え、それが他人に対しても良い印象をもたらす。気になっていた服や化粧品を見に行こうかと、一日の仕事を終えた里美は、近くの繁華街に出かけた。ショーウインドウで飾られた通りを歩きながら、モノとの出会いに胸が高鳴なる。その姿は、道行く人にも楽しそうに見えることだろう。

「里美?」

里美を呼び止めた、どこか聞き覚えのあるその声は、優しく暖かい。

「せ、先輩!?」

里美は、驚きを隠せなかった。まさか、懐かしんでいた矢先に本人が目の前に現れるなんて。

「最近どうしてるの?」

「近くの会社で働いてます!先輩こそ、どうしてるんですか?」

少しの世間話と連絡先の交換だけをして、二人は別れた。正直、里美は驚きとドキドキで余裕のかけらもなかった。自宅に着いてもなお、収まらない気持ちを胸に抱えていた。

「先輩、変わってなかったなぁ」

愛の北02淡い感情を抱きつつ、里美は洗面所に向かった。里美は、鏡に映る自分を見つめながら今日のことを思い出していた。洗面所の鏡は、女性の容姿に影響を与え、そこに映り込むものは女性の容姿に反映されてしまう。そのため、洗面所は常に綺麗に整えていなければならない。里美はさっと、歯ブラシや洗面用品を整頓した。

「やっぱり洗面台はすっきりしてた方が気分がいいよねっ」

洗面所の乱れがなくなると、心なしか鏡に映る自分も落ち着いて眺めることができる。洗面所は部屋の北側にあったが、風水では、北の方位・洗面所はともに、風水の五行でいう水の気に属する。水の気は愛情の運気に属しており、その場所を構成する色としては原色を避け、パステルカラーでまとめるのがよい。住み手が女性なら白やパステルピンクを基調とするのがよいだろう。

「爽やかで可愛いし、いい色」

里美は、パステルピンクを基調としてコップやタオルやマットを新たに準備した。パステルカラーは、清潔感と愛らしさも感じられて洗面所という場所の性質に適している。ふさわしい色やカタチは、その場所を活気づけてくれるような心地がする。さらに、里美は鏡の脇にそっと一輪のお花を添えた。花は空間に生気をもたらす。洗面所が容姿や愛情の運気と関わっているのであれば、なおさらだ。里美は、花の香りを感じながらリビングに戻った。