ファッション業界といった場所は大変だと思うのも、今担当しているお客様の職業に関して、そういったお客様だけに、余計感性や感覚が研ぎ澄まされているといった部分で、インテリアコーディネーターといった資格と、心理カウンセラーといった部分とを併せ持つ私、インテリアカラーセラピストとしての役割に、やたら口を挟むお客様に少々お手上げな状況で、私は圧倒されていた。
彼女は二十代終りに差し掛かったファッションモデルとしての経験を経て、ファッションデザイナーとしてのキャリアを築いている、少々近寄りがたい雰囲気の研ぎ澄まされた感じの美女といった人だった。彼女は、中途半端な風水知識と、心理学的な知識とを武器に、私に挑発的に接している。実際、仕事はやりにくかった。
最初に打ち合わせした時の会話でこう言った彼女が、なるほど結婚といったものを焦っているらしいこと。そして、美といったものへのこだわりから、彼女が、周りの男性から近寄ってこなくさせているのも、彼女の周囲へのわがままな視点と、より好みを知らず知らずしていて、好き嫌いを食事やインテリア周囲の人間関係に知らず知らずに彼女自身が強く出していて、余計に周りの人間に近寄りがたい印象と雰囲気を与えていた。
彼女は、高貴で、感性を研ぎ澄ませる色だと風水で知っているからと、これまで、部屋はパープル、つまり紫系で統一していると言っていた。最初の時の、彼女の印象は、プランナーさん、やけに丁寧なしゃべり方するのですね、それって普段の攻撃的な部分を持つ人が、自分の性格を意識していて、それをカバーするための手段って心理学で言っていましたよ、と切り出してきた。さすがに最初から、私はその客に苦手意識を持ってしまった。凄く、恋愛願望、結婚願望はあるし、彼女自身とても自分で魅力的だと語っていたし、私もそう思う、しかし、なかなか恋人も出来ないし、結婚もしたいと言っていた。
私はまず、パープルで部屋を統一するのはいいが、逆にパープルは高貴で高級な印象は与えるが、異性などから近寄りにくくなってしまう色だといった。パープルだらけの南に面したLDKに黒い色、とりあえず、黒と紫を組み合わせたカーテンやラグなどに替えるといいとアドバイスした。そして、南東に向かったキッチンの出窓などにピンクの色の小物を置くといいし、フルーツのデザインを模した食器を揃えるなどするといいとアドバイスした。
彼女は、とにかく私にリードしているかのように、率先して、私に挑発的に対応してきた。これじゃ、縁遠くなっても仕方がないなと思った。北東に位置した和室の寝室に、鉢植えなどが多く置かれている。ここについても、私は、鉢植えは根付く、という印象と、現状維持の意味合いが込められ、結婚適齢期の女性の独り暮らしの寝室の和室に飾るの良くないし、その代わりに赤い花をかざるのがいいと助言した。
しかも、結婚とか、恋愛に対して焦っている女性に、和室といった環境のある住環境は望ましくなく。和室ながら洋のアイテムなどをなるべく置いて、明るい印象に寝室を変えるといいと言ってアドバイスした。ヨーロッパ系の、絵画をあえて寝室として使っている和室に飾るなどいいとアドバイスした。
次に、彼女は、洗面室などや、浴室を案内してくれた。どうっ、奇麗にしているでしょといって自慢した彼女だが、浴室の鏡や洗面台の鏡が少し汚れているように感じた。美しさを大切にしたい人にとっては、自宅の鏡や、ガラス窓なとを奇麗に磨いていたり、奇麗にしておくことは大切といったことは後で説明した。プラスチックなどの容器が沢山、並べられた浴室は、シャンプーなどは簡潔に整理して、シャンプー容器はガラスのものに変えるといいとアドバイスした。なるほど、彼女は、多少風水がわかっているのか、北向きにはマッチしたカラーである、グリーンを浴室のタイルに採用している。私は。あえて、ここにパープルと組み合わせた濃い目のグリーンとの組み合わせたタイルで飾ったり、浴室にパープルを取り入れるべきだと言った。ディープグリーンとパープルの組み合わせは金運アップに結び付くとされている。
今回の仕事は、やや簡潔に済ませたかった、正直疲れるお客さんだった。しかし、帰ろうとした私に、彼女は、少し寂しそうに、これだけですか残念ですと言った。正直、彼女の私への、対応に、私を大変意識した対応ぶりだと感じたので、これはこれで意味は理解できたが。先生っ、背の高い観葉植物って要りますかって聞いてきた。何かと聞くと、お世話になったので、プレゼントしますといった具合だ。
何となく状況から意味は理解できた。私は困惑した。せっかくだからもらっておきます、ありがとう、といった私に彼女はにこっと笑った。次に私は、お客さんのようなケースには背の低い観葉植物を飾るのをお勧めします、風水では効果があります、この際今度お返しにプレゼントします、といった。
正直、困惑していた。私は半年前に、大恋愛して結婚直前に急死した恋人の影をひきずっていた。彼女はいろいろ理由をつけて、私の風水アドバイザーの知識とノウハウを勉強させてくれと言ってきた。返答は今度と言っておいて、私は携帯の番号だけ教えて、一応別れた。
正直、あれほどの美女から好意を寄せられるのは悪い気はしない…ただ、彼女と私とは相性が悪い気がする。ただ私は、彼女は恋愛願望とか結婚を焦っているたたそれだけだと感じた。
