第1回: 色と内面、家族のいろいろ

  第1回: 色と内面、家族のいろいろ
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心と彩り -家族の絆を深める物語

第1回: 色と内面、家族のいろいろ

心と彩り -家族の絆を深める物語

どんな人でも皆、人生の中に家族と共に生活する時期がある。だけれども、その形はそれぞれだ。テレビや映画の中でみる家族のイメージとは裏腹に、家族にはそれぞれのあり方がある。また、家族の中でもメンバーそれぞれの性格に違いがある。そのような違いを持ちつつも、それぞれのバランスを作りながら家族生活は進む。

色と内面、家族のいろいろ01都内の住宅地に住む美里・優二夫妻、その息子・娘である聡・凛の四人家族もまた、そのような違いを抱えながら毎日の生活を送る家族の一つだ。美里と優二は結婚して16年。息子の聡は高1、娘の凛は中2だ。四人の家は東京都内の住宅地にある一軒家である。憧れのマイホームというと、なんだか照れくさいけど、家やインテリアを見るのが好きだった美里と優二にとっては、自分たちの家を持つのが一つの目標であった。

「子供たちも、高校と中学だし、このタイミングで買えてよかったね。」

「そうだね。でも、もっと家具を揃えたいんだよなー。」

優二は元々インテリアに興味があったため、家の内部空間の雰囲気も、統一感をもって作りたいと考えていた。だけれども、家というのは一人のものでもない。家族それぞれの趣味や性格が空間の中のモノやその置かれ方などに表れて、独特の雰囲気を作る。

「子供たちはどんな部屋にしたいんだろうか。」

所謂、思春期に突入していた二人の子供とは最近コミュニケーションが疎かになっていた。子供達には家の外での子供達の世界があり、また家の中では個室にこもりがちであったからだ。優二や美里は気になりつつも、個人の世界を尊重したいという思いからなかなか積極的に話しかけることができなかった。

「おかえり。」

優二が聡に対して声をかけたが、聡はその脇をさっと通り過ぎて、階段を登り、二階へある個室へと入っていった。どことなく、お互いに寂しげな印象だ。

「どうにか、雰囲気変えたいんだけどな。」

優二は、階段の雰囲気がどことなく暗い気がしていた。空間の雰囲気が暗いと、そこにいる人達の気分も沈んでしまう。

「ちょっと明るい感じにできないかな。」

四人の家は、二階に個室があり、一階にリビング・ダイニングキッチンがあるという構成になっている。そのため、階段は一日の中で個室以外に出る初めての空間である。また、四人それぞれが交錯する出会いの空間でもある。優二は、その出会いの空間が生き生きしていると、家族の関係もまた息づいてくるようか心地がしていた。

色と内面、家族のいろいろ02「階段の踊り場に植物があるとよさそう。」

緑色は安心感や調和を表す色だと色彩心理学ではいわれている。優二も緑の葉の植物を見ていると、どこか穏やかな気分になれた。階段の踊り場は、脇の壁にある窓の光で照らされていて、観葉植物を置くにはふさわしい場所であった。

「うん、落ち着く場所になったかも。」

階段の踊り場はとても不思議な場所だ。これといってなにかを行う場所ではないが、そのスペースは広がりを持っている。階段を昇り降りする中で、ふっと一瞬視界が開ける場所で、人の存在を感じさせる。調和を表す緑色に溢れた踊り場は、人々の関係をやわらかく繋ぎ合わせる。

「朝か。。リビングでお茶でも飲もう。」

優二が一階に向かうため階段を降りていると、下から先に起きていた聡が上がってきた。

「おはよう。」

聡がぼそっとつぶやいた。

「おはよう。早いね。」

優二は少し驚きながら、挨拶を返した。話す機会が少なくなったことで、話しづらい雰囲気になっていたが、お互いに相手を遠ざけたいわけではなかった。きっかけが必要だったのだ。空間の色を変えるというちょっとした変化が、家族を再び繋ぎあわせた。