解けない魔法 終章: たまたまよ…

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カヴァース小説部

終章: たまたまよ…

「そう言えば前から聞きたかったんだけど、ノジェクさんが恵梨香さんとの結婚を決意したキッカケって何かあったんですか?昔は結婚に対して踏み切れず、ずいぶん悩んでいたと思ったんだけど?」

ノジェクに対して、隼人が長いあいだ疑問に思っていたことを口にする。

「え?あ、いやあ、それはまあ、恥ずかしい話なんですけど、恵梨香からとても素敵な言葉をかけてもらって、それで私は結婚を決意したんです」

「素敵な言葉、ですか?」

興味津々の隼人が、前のめりになってノジェクの顔を覗き込む。

「はい、そうです。恵梨香が私に対して、真剣な顔で、一生解けない魔法をかけてくれないか、と言ってきてくれたんです」

「一生解けない魔法、、、」

「ええ、そうなんです。その言葉を聞いた時に、私のハートの奥で何かのスイッチが入ったんです。ああ、私は恵梨香に解けない魔法をかけてあげなきゃ、結婚しなきゃって」

「はあ、なるほど、なるほど、、そうですか、、、ふ~ん、、、」

隼人は感心しながらも、どこか釈然としない不敵な笑みを浮かべた。

「なあ、美咲、そして恵梨香ちゃん、、ちょっと二人に聞きたいことがあるんだけど、、、」

隼人が姉妹に目を向けると、美咲と恵梨香はそっと肩を寄せ合い、来るべき運命に向かい合う。

「今のノジェクさんの言葉、、なんか何処かで聞いたことがある言葉なんだけれど、、これは一体どういうことなのかな、、?」

「え、いや何だろう、、?なんか姉妹だと、同じような運命辿ったりするものなのかな?ねえ恵梨香?」

「う、うん、そうね、きっとたまたまよ、たまたま、、」

「ああ、、何てことだろう、、僕の一世一代の誓いの言葉が、、身内とはいえ美咲以外に知られるなんて、恥ずかしい、、、恥ずかしすぎるじゃないか」

真っ赤に染まった顔を、両手で覆い尽くして恥じ入る隼人。羞恥にまみれた夫を前に、美咲はかける言葉が思いつかず、あたふたと慌てふためく。

「もう今日は二人とも許さないぞ。ノジェクさんキッチンの奥にワインセラーがありますから、紅茶なんて飲んでないで、今日は思いっきりワイン飲みましょう!」

「えっ!?いいんですか?なんかよく分からないけれど、やった!」

事情がうまくのみ込めないが、大好きなワインにありつけてノジェクは手放しで喜んだ。急に大人たちが色めきだったので、潤也は驚いて不安げな表情を浮かべている。大きな瞳を潤ませ、今にも泣き出してしまいそうだ。大人たちの高揚を察知したラークは、甲高い声でキャンキャンと鳴きはじめる。

屈託のない笑顔で、仲睦まじく団らんする家族たち。その笑顔を見守るように、白いソファは温もりのある包容力で、幸せな家族たちを今日も優しく包み込んだ。

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